沈黙 サイレンス
「人間がこんな哀しいのに 主よ 海があまりに蒼いのです」
【あらすじ】
遠藤周作の小説「沈黙」を、「ディパーテッド」「タクシードライバー」の巨匠マーティン・スコセッシが映画化したヒューマンドラマ。キリシタンの弾圧が行われていた江戸初期の日本に渡ってきたポルトガル人宣教師の目を通し、人間にとって大切なものか、人間の弱さとは何かを描き出した。17世紀、キリスト教が禁じられた日本で棄教したとされる師の真相を確かめるため、日本を目指す若き宣教師のロドリゴとガルペ。2人は旅の途上のマカオで出会ったキチジローという日本人を案内役に、やがて長崎へとたどり着き、厳しい弾圧を受けながら自らの信仰心と向き合っていく。スコセッシが1988年に原作を読んで以来、28年をかけて映画化にこぎつけた念願の企画で、主人公ロドリゴ役を「アメイジング・スパイダーマン」のアンドリュー・ガーフィールドが演じた。そのほか「シンドラーのリスト」のリーアム・ニーソン、「スター・ウォーズ フォースの覚醒」のアダム・ドライバーらが共演。キチジロー役の窪塚洋介をはじめ、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシといった日本人キャストが出演する。
【作品プロフィール】
2017年1月21日日本上映 / 159分 / アメリカ
監督 / マーティン・スコセッシ
脚本 / ジェイ・コックス
原作 / 遠藤周作
小説『沈黙』に登場する架空の「トモギ村」のモデルの一つとして、江戸時代に大村藩が治めていた黒崎村を設定しています。 現在は長崎市の外海地区にある「出津文化村」の一角で、海をみおろす場所に文学碑があり、そこに遠藤周作が残した碑文。
「人間がこんな哀しいのに 主よ 海があまりに蒼いのです」
作中に台詞としてこのメッセージが出ることはないけれど、作品全体としてこの言葉ほどしっくり来るものはないと思う。宗教について深く学んだこともなければ、聖書を最後まで読んだことがない。だからこそこの映画のメッセージをきちんと受け取れたかと思うと定かではないけれど、伝わるものはとてもあった。短くはない映画ではあったけど話の構成や音響が非常に良かった。エンディング曲がなく自然の生活音の中、スタッフロールが流れるのも良かった。最後まで余韻に浸れる。
「信仰」とはなんだろうか。全てを賭しキリスト教を世界に広めようとする彼らは何を想うのか?神の絵を踏めずに殺される人と神の絵を踏み苦しみながら生きながらえる人の違いとは。思いは見える形にしないとならないのか。思想の共感は一体何を生むのか。その先に何があるのか。 作中の「日本人は自然や目に見えるものしか信仰しない」「この国は全てのものを腐らせていく沼だ」「腐った苗床では草木は育たない」知らず歪めてしまったキリスト教に人々は一体何を夢見ていたのか。
また「日本人は自然や目に見えるものしか信仰しない」この言葉により「日本人は目に見えないサービス・芸術にお金を払わない」という最近話題になったコラムを思い出した。もしかしたら遥か昔から根付く何かがあるのかもしれない。