午前2時の映画鑑賞会

すきなものを、すきなだけ。

ヒトラーの忘れ物 (Land of Mine)

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大人が残した 理不尽な任務

少年たちが見つけるのは、憎しみか

明日への希望か ──

 

 

【あらすじ】

1945年終戦直後のデンマークを舞台に、地雷撤去を強制される敗残ドイツ軍の少年兵たちの過酷な運命を、史実に基づいて描いた。第2次世界大戦後、デンマークの海岸沿いに残された無数の地雷を撤去するため、元ナチス・ドイツの少年兵たちが連れて来られる。彼らを指揮するデンマーク人軍曹はナチスに激しい憎しみを抱きながらも、無垢な少年たちが次々と命を落とすのを見て良心の呵責にさいなまれるようになっていく。2015年・第28回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、軍曹役のローラン・モラーと少年兵役のルイス・ホフマンが最優秀男優賞を受賞した(映画祭上映時タイトル「地雷と少年兵」)。また出演俳優は演技未経験者も多く、見どころの一つとなっている。

【作品プロフィール】

2016年12月17日日本上映 / 101分 / デンマーク・ドイツ

監督 / マーチン・ピータ・サンフリト

脚本 / マーチン・ピータ・サンフリト

 

 

監督コメント

 

製作開始時は地雷撤去のパイオニアを題材にしていたが、リサーチの過程で少年兵投入の事実を知った。そして西海岸の墓地で、戦争終結後に若くして没したドイツ兵の墓を大量に見つける。深いショックを感じたサンフリト監督は、調査と並行し3年半を費やして脚本を書き上げた。「少年たちも戦時中は悪行を働きましたが、それは大人たちの洗脳の結果。そういう少年たちを罰したいのか。語るべきだと思った。皆が知るべき物語だと思った」。

デンマークも他の国と同様、自国の良いことを言いたいわけです。ユダヤ人がスウェーデンに逃亡するのを、どれだけ助けたか。しかし同様に、デンマークも暗い歴史を持っています。それを語り、学び、賢くなることが重要だと思ったんです」。作品づくりにおいて、サンフリト監督は「何かを学ぶこと」を重要視している。「私が思うに監督の仕事とは、エンタテインメント以上のものをつくることです。もちろん、純粋な娯楽作品も意義があると思います。しかし私は、楽しく鑑賞したその先に、何かに気づいたり学ぶことこそが重要だと思っています。今回は知られざる暗い歴史があること、そのなかで人間が人間をどう扱うべきなのかを伝えることが第一でした」。

 

その言葉通り、少年兵の希望とラスムスンの葛藤を通じて根源での人類愛を照射し、豊かな人間賛歌を謳い上げている。「国の暗部を糾弾するためではなく、むしろジレンマを描きたかった。憎悪や、目には目をという復讐はうまくいかないのです。互いに尊重し合うことが重要であり、ミイラ取りがミイラにならないように生きるためには、ということを描いています」と説明する。

 

(映画.com)

 

 

地雷は爆発するものだ。

映画を観るまで私はそのことを忘れていた。フィクションではなくノンフィクションかと思うほど緊迫感の続く映像。どこまでも続くような青い空と白い砂浜。そんな長閑な海岸線に埋められた約200万個の地雷を、強制的に連行されたドイツ軍の少年兵が撤去する――。何種か地雷の種類は出て来るが、撤去方法は同様で彼らは約200万個の地雷が埋まる海岸に一列に並び鉄棒を砂浜に刺しながら、一つ一つと手探りで探っていく。地雷を見つけると手で周辺の砂を取り除き、地雷の内部にあり核となる信管を抜くのだ。彼らを指揮するデンマーク人軍曹は海岸にある全ての地雷撤去を終えれば少年兵たちを故郷へ返すと言い、時に酷い暴力でもって撤去を促す。

地雷は爆発するものだ。

どんなに注意深く探ろうとも、彼らは10代の少年であり地雷の撤去など行ったことがない。一人一人と腕が飛び、足が飛び、命が飛び散る。デンマークにとってドイツは敵だ。ドイツ兵により領地は荒らされ、彼らの家族はたくさん殺されたのだろう。その憎しみが消えることはない。だがしかし過酷な環境下でひたむきに生きる少年達。異なる国籍・年齢・信仰を共に過ごす生活が凌駕する。

 

その人をその人たらしめるものは、決して所属であってはならない。

そんな大切なことを教えてくれる非常に貴重な映画だ。

 

 

 

ただあまり邦題の「ヒトラーの忘れ物」がしっくりきていない。この戦争はヒトラーだけのものではないし、この話にナチスは出てもヒトラーの名前は出ないからだ。かつ少年兵達は決してヒトラーの持ち物ではない。

 あまり英語に明るくないが、海外での上映タイトルは「Land of Mine」「Land  Mine」は訳すと「地雷」

 「Land」(所有物としての)土地、地所、国、国土

「of」…の、の所有する

「Mine」私のもの

 

ダブルミーニングとなっているこの英題を活かして欲しかった。この映画がヒトラーの色眼鏡を掛けて観ることなく、広く伝わって欲しい。 

 


【映画 予告編】 ヒトラーの忘れもの